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と訊いた。
徳次は急に目くばせをした。
「坑には入つてみたんかね。あすこはもう何年も入つた人がないちふことだが」
ところが驚いたことにはこの男は、房一があらゆる初対面でやる鹿爪らしい挨拶の文句を今やはじめようとしたときに、いきなり前に立ちはだかるやうに、と云ふより、殆ど気づまりのするほど真正面に近々と顔をよせて、おまけに露骨に房一の顔を見入りながら、
房一はさつきから自然と聞いてはいたが、事は初耳だつた。
「おい、今高間君が来ていたんだよ」
「あれらしいのよ」
近づきながら、何となくほの紅くなつて、中声で叫んだ。そして、房一の傍にいる小谷と徳次を認め、小腰をかゞめた。括くゝられてふくらんだ袖口からは気持のいゝ白い腕が露はれていた。
「それは、まあ、都会風でいけばそれでいゝわけだが」
「ねえ。――はやく。――患者ですわ」
「うむ、何かあ」
と云つた。
「開業日はいつかの」