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が、登り切つた所で、ふりかへつて盛子を待つた。そして、何となく様子のちがつたゆつくりさで登つて来る盛子の、上うは目になつた、意味ありげに笑つている顔を見た。
「なにしろ、迷ふんだな」
「まあ、――上の町の大石さんとこ位は行つとくのもよからうが」
「なんだつて、脳溢血?――そいつあ大変だねえ」
徳次は慌てた。
「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」
「わたし、あれらしいのよ」
房一はその玄関土間に足を踏み入れて、
「どうしませう、ほんとうに!すつかり落しておしまひになつたんですのね。――どうも、さつきから様子がちがふと思つていたんですが、道理で!――さうでしたわねえ、お髯がなくなりましたわねえ」
相手が急に三人にふえたためか、柵の中の長身な男は一層興奮した。
それは初めて口に出す言葉だつた。
「それに、永い間この土地をはなれていたもんですから、土地の事情にもすつかり疎うとくなりましてね、これは一つ、どうしても今後こちらのお力にすがらないことには立つていけないと思つている次第ですが――」
が、材木置場の混乱にもかゝはらず、そこから一段と小高くなつている出張所の構内では、やはり高張提灯がかゝげられ、焚火が燃え、人が立つて歩いていたが、をかしい位にひつそりし、柵のところにかたまつた人影は下方の混乱を黙つて見物しているとしか見えなかつた。